第二回豊橋ライブに参加して参りました。
技術の伝承をメインテーマとした実際的な勉強会研究会で、おもに内科の会ですのでPCI(冠動脈のカテーテル治療)が中心ですが、最近の流れのなかでTAVI(TAVR、カテーテルで行う大動脈弁置換術)のセッションもまる一日あり、それに参加しました。
TAVIの会場では、大動脈弁の解剖整理から始まり、心エコー、外科治療の現状とTAVIへの期待、バルーン大動脈弁形成術、TAVIの総論、Sapien弁とCore Valveの使い分け、Transfemeralアプローチ、Transapicalアプローチ、合併症や対策、コメディカルの役割などが半日かけて論じられました。
いずれも基礎から応用までをきちんとまとめられた聴きごたえのあるものでした。
Massyの林田健太郎先生の見事なオーガナイズによるものでした。
林田先生ご自身の講演、さまざまな合併症と対策も実に示唆に富む、貴重な内容の連続でした。
東京ベイ・浦安市川医療センターの渡辺弘之先生(最近、榊原記念病院から異動されました)のエコーの講義は圧巻でした。
高齢者などの重症ASの手術適応のなかで、こんなになるまで放置するほうが問題と、すばり本質を突く鋭い内容でした。
私の担当は外科治療の現況とTAVIに期待するものでした。
大動脈弁狭窄症ASは高齢化社会のため増加の傾向にあり、患者さんの重症化も進んでいます。
その中で死亡率や合併症を最小限に抑える努力をして成績を予想死亡率の3分の1近くまで下げているところをご紹介しました。
そうした中で全身状態が悪い患者さんとくに超高齢の方を中心にTAVIが役立ちそうなお話しをしました。
また生体弁での大動脈弁置換術AVRの患者さんで、将来再手術が必要になったとき、TAVIによるバルブインバルブつまり新しい生体弁を古い生体弁の中で広げることは、患者さんにとって大きな福音になることをお話ししました。
そうした考え方をすでに治療方針に組み込み、大動脈弁形成の患者さんでも、生体弁AVRの患者さんでも、将来必要におうじてTAVIの恩恵が受けられるような心臓手術を現在すでに行っていることをお示ししました。
そしてSutureless valveつまり手術中にTAVIのように入れる方法の良さをご紹介しました。PARTNER試験という臨床研究で、超ハイリスク例ではTAVIと外科AVRの成績に差があまりないことが示されましたが、今後外科がさらに良い仕事ができる可能性が示唆されたわけです。
ランチオンでは豊橋ハートセンター・名古屋ハートセンターの大川育秀先生の司会で、榊原記念病院の田端実先生がASの治療戦略をハートチームの観点から話されました。
田端先生は心臓血管外科の若手のホープでTAVIを含めたMICS手術で活躍中の先生です。
この中でTAVIのあとはPLVつまり隙間からの血液の漏れが起こるケースが多く、しかもその漏れが軽度でも患者さんの生存率が下がるというデータが紹介されました。
私もこの研究には注目していたため、少し討論に参加しました。
まだまだ外科のAVRは患者さんの役に立つとあらためて思いました。そのためには外科の治療成績をさらに向上させることが大切で、その観点で上記の Suturelessバルブはこれから期待できると思いました。
午後にはビデオライブが2つあり、1つはTransapicalアプローチ(小さく左胸を開けてそこからTAVIを行います)、もうひとつはTransfemoralアプローチ(下肢の付け根の動脈からTAVIを行います)の実例でした。
小倉記念病院の白井伸一先生や川崎市立川崎病院の古田晃先生、昭和大学藤が丘病院の若林公平先生ら熱い若手のディスカッションが良かったと思います。
すでに大御所の渡辺弘之先生はここでも存在感のあるコメントをして下さいました。
私はTransapicalアプローチの方のコメンテーターのひとりでしたので、外科の観点からさまざまな議論をさせて頂きました。
倉敷中央病院の小宮達彦先生と田端先生そして私と外科系が3名参加していましたので活発な論議ができ、Transapicalアプローチの問題と解決が比較的まとまったように思いました。
出血がきれいに予防あるいはコントロールできればこの方法は安全で応用範囲も広く、患者さんに益するものであるとあらためて実感しました。
一日中TAVIばかり議論した最後の締めくくりは「ハートチームの構築」のシンポジウムでした。
それぞれの施設でこのハートチーム作りのためにどういう努力をしているかが紹介されました。
私たち名古屋ハートセンターでは毎朝、循環器内科と心臓血管外科の医師および一部コメディカルが集まり、親睦や密な連携をかねた症例検討を行っていることをご紹介しました。
以前からこうした会を開きたく思っていましたが、事情あって計画倒れでとどまっていました。
構造改革が実ってようやくこの4月から実現したもので、ようやく先進的な施設の先生方と一緒に議論できるレベルになって少しうれしく思いました。
休憩時間ほとんど無しの充実した一日を終えて、豊橋ライブはめでたくお開きになりました。
鈴木孝彦先生や関係の皆様方に厚く御礼申し上げます。
平成24年5月26日
米田正始 拝
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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