患者さんとの信頼関係、人間関係は時間が経っても、というより時間とともに深まるような気がします。
京大病院にいたころに手術させて頂いた患者さんたちとの交流もそうした雰囲気のなかで大切にしています。(患者さんの会のページをご参照ください)
下記のお手紙は、10年まえに、ベントール手術(右図)というやや大きな心臓手術のために四国からお越し下さった患者さんのご家族からの礼状です。
当時としては比較的新しい、ステントレス弁という高性能の弁をもちいてミニルート法という方法で手術を行いました。そうしておけば、将来弁が壊れてもしもの再手術になったとしても、その手術がより簡単により安全になるという考えによるものです。
その患者さんのご主人様も、その後、同じ病気のためベントール手術を受けられ、元気になられました。
後年、この患者さんが黄斑部病変という眼の難病にかかられたときにも、私に相談くださり、その道のエキスパートである京大病院眼科教授の吉村先生にご紹介し、視力を回復されました。お役に立ててうれしく思った次第です。
いつも思うことですが、心臓手術を受けられた患者さんが、身の上相談や、そのご家族を紹介して下さることはこのうえない喜びです。信用して下さったことを光栄に思うからです。
********患者さんのご家族からのお便り*******
謹啓 吹き抜ける風がなんとも心地良く感じるころとなりました。
米田先生にはご壮健にてお過ごしのこととお喜び申し上げます。
先日は、母がお世話になりまして誠にありがとうございました。
久しぶりに米田先生にお会いすることが出来母と共に本当に嬉しく思っております。
今回の検診はちょうど術後10年の節目だっただけに、米田先生にお会い出来た喜びはひとしおでした。
10年前、米田先生にお会いした時のことは今でもはっきりと覚えています。
突然の医師からの宣告で“母を失うかもしれない”というとめどなく押し寄せてくる不安に押しつぶされそうになりながら診察室のドアを開けました。
初めてお会いする米田先生は威圧感のようなものを全く感じさせることなく、家族にも実にわかりやすく説明して下さいました。
その時、患者とその家族にそっと寄りそって下さる先生だと直感いたしました。
そして、お話をして下さる時のまっすぐで誠実な米田先生の目を拝見した時「米田先生に母の命をゆだねよう」とその場で確信したことを今でもはっきりと覚えています。
また、不安がる術前の母に対しても何度も向き合ってお話しして下さり、最終的には母の意志を尊重して、最善の方法を選択して下さった米田先生のお医者様としてのお姿には、いつも本当に頭の下がる思いでした。
ありがとうございました。
さらに、患者の家族に対してもいつも温かく見守って下さる米田先生のお人柄にもどれだけ心が救われたかわかりません。
米田先生が新たな命を母に吹き込んで私どもの元へ戻して下さったこと、日々感謝致しております。
先生から渡された命のバトンを一日でも良い形でつなげていきたいとの思いでこの10年無我夢中で駆けぬけてきましたが、先日、先生に、「弁の状態が手術した時のままだ」と教えていただき、私もまた救われたような気持ちでした。
私にとっては最高に嬉しいお言葉でした。
少しずつ老いてきておりますのでこれからは今まで以上に私の課題も増えてくるかとは思いますが、これから先も引き続き良い状態のままでさらなる未来へとつなげていきたいと思っております。
本日は当地の初夏の味覚である小夏を一箱別送させていただきましたので、お召し上がりいただければ幸いです。
食べる前に少し冷蔵庫に入れると、さらにおいしくいただけると思います。
名古屋の方のご住所がわかりませんでしたので大変失礼かとは存じましたが、病院の方へお届けさせていただきました。
今後も何かとお世話になることと存じますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
両親からも米田先生にくれぐれもよろしくと申しております。
末筆ながら、米田先生のますますのご活躍を心よりお祈り申し上げます。
謹白
平成24年5月28日
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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