右室二腔症はこどもの間に手術することが多いのですが、中には成人期に入って重症化し、手術を受けるかたも少なくありません。
それらの方々でも20代ー40代が結構多くおられます。女性はもちろん、男性でもなるべく小さな創で、できれば早い仕事復帰・社会復帰を望まれます。当然のことですが。
そこで弁膜症でのミックス手術(小切開手術)の経験を活かし、安全優先の範囲内で、この右室二腔症にもミックス手術を行っています。(患者さんのお便り参照)(心臓手術・事例:右室二腔症へのミックス手術)
その患者さんの心臓の位置関係や胸骨の長さと形にもよりますが、無理なく可能であれば胸骨下部部分切開で皮膚もそれに応じた小さい創それも首からかなり下の低いところを切るようにしています。
心臓があまり低くないときは胸骨は通常どおり完全に正中切開する必要がありますが、その場合でも皮膚は小さく、世間一般の半分程度に切るように、工夫を重ねています。
胸骨下部部分切開でのメリットは、胸骨の安定性が良いため、術後早い時期から痛みが軽くなり痛み止めがあまりいらないことです。これまでの経験では術後3日目以後はあまり痛み止めを使わなかったという方が多いです。胸骨の安定が良いということは、治りも早く、痛みが少ないこととあいまって、仕事復帰は通常よりかなり早いです。
なお右胸を小さく切開するポートアクセス法はこの右室二腔症の手術には使えません。心臓のやや左側にアプローチする必要のため視野が合わないからです。
ともあれ皮膚小切開のメリットはなんといっても、術後の創が小さくてきれいなことです。骨は通常どおり切りますから、術後の仕事復帰は通常どおりです。骨が完全に治りきるまでには2-3か月かかりますから、その間、肉体労働や上半身をねじるタイプの仕事やスポーツはがまんして戴いています。
可能なら胸骨下部部分切開をもちいますが、それが心臓の中を治す、一番大切なところで視野が悪いと予測されるときには胸骨は通常 の全切開(ただし皮膚は小さくきれいな切開)に切り替えるわけです。
このようにして、ほとんどすべての患者さんにミックス手術の恩恵が行きわたるようにしています。こころの創も小さくなりますと喜んで頂くことがよくあります(患者さんの声(心臓手術体験記)お便り67をご参照ください)。
特定の、ごく一部の患者さんにだけ益するようなミックスであってはいけない、と考えるからです。
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心臓手術と美容について
胸骨「下部」部分切開法とは
ビデオ 連合弁膜症のご高齢患者さんへのミックス法・3弁手術
患者さんやご家族からのお便り
お便り43 がんの手術後に心臓腫瘍がみつかった患者さん
お便り46 遠方からご自分の信念で来院下さった患者さん
お便り48: ミックス手術ですみやかに社会復帰された患者さん
お便り50: 大動脈二尖弁と上行大動脈瘤の患者さん
お便り61: 同、デービッド手術のため三重県からお越し下さった患者さん
お便り62: 同、僧帽弁形成術と冠動脈バイパス手術を受けた患者さん
お便り66: バルサルバ洞破裂と心室中隔欠損症などを克服した患者さん
お便り67: ミックスで右室二腔症の手術を受けられた患者さん
お便り70: 自己心膜で大動脈弁形成術(再建術)を同法で受けた患者さん
お便り71: 同手術で大動脈二尖弁形成を受けた15歳の患者さん
お便り72: 二弁置換とメイズ手術を同法で受けた患者さん
お便り73: リウマチ性連合弁膜症と心房細動を同法手術で克服
お便り78: ベントール手術をミックスで受けられた患者さん
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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