弁置換手術の際に生体弁が広くつかわれるようになり、その後長年月たってから再手術する機会も増えました。
患者さんは三重県在住の80歳男性で、10年まえに他病院で生体弁での大動脈弁置換術を受けられました。
1年前から胸痛や全身のだるさを覚えられ、近くの病院で生体弁が壊れて逆流を発生しているため再手術が必要と言われてから私の外来へ来られました。
手術では前回手術の影響か、周囲組織との癒着が高度で(ようするにがちがちに貼りついて、心臓にすぐ到達できない状態で)、それを剥離するために時間を要しました。
とくに上行大動脈の癒着はきびしく、安全のためにこれを人工血管で置換しました。
通常の再手術ではこれほどの癒着は珍しいのですが、ときおり遭遇する状況ですのでじっくりと対処しました。
新たな生体弁を植え込み、術後8日目に元気に退院されました。
手術はけっこう大変でしたが、患者さんはすっかりお元気になられ、順調な回復ぶりで、チーム一同、やりがいのある大きな仕事だったねとうれしく思っています。
そのあとその患者さんの息子さんも心臓病があることが判明し、その心臓手術までお引き受けしました。
息子さんはまだお若いため、通常の生体弁よりも長持ちしやすい自己心膜による弁再建を行いました。
その患者さんの年齢や体力、ライフスタイルに合わせたきめ細かい治療、つまりオーダーメイド治療が良いと思うからです。
ともあれ、このように大切なご家族まで任せて頂けることを光栄に思います。
以下はその患者さんからの感謝のお便りです。病院のご意見箱に入れられました。
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乱筆乱文をお許し下さい。
80才になろうとする私に新しい命をくださったことこの上もない喜びであります。
心から感謝し厚くお礼申し上げます。 ありがとうございました。
おそらく四日市などの他の病院へ行っていたらこの命はなかったのではないか
と思っています。
今までいくつかの病院へ入院しましたが、この名古屋ハートセンターのようなすばらしい病院ははじめてです。
まず米田先生の自信に満ちあふれた言動と説得力にそれまでの不安と迷いはかき消されました。
米田先生を中心に北村先生、深谷先生、木村先生のチームが12時間にわたる手術を成功させ、私の命を救ってくださいました。
次に看護師さんたちの真心のこもった対応が心に残りました。
まず、手術日前夜、家族のものも帰り、やや気持ちがふさいでいたところへ、若いめ
がねをかけた看護師さんが(名前を忘れて申し訳ない)来てくれて、「大丈夫けん元気
を出して、わたしのパワーをあげるけん」と言って私の手をぎゅっと握って何度も何度
もはげましてくれたこと、おかげで手術日当日は何の不安もなく、元気に手術室へむ
かえました。
退院の日にもその看護師さんが来てくれて「よかったね」と笑顔で言ってくれたこと、CCUで苦しんでわがままを言う私に、やさしくはげましてくれた玉置さん、
天野さん、5階のチーフの草野さんは、CCUへ何度となく私をはげましに来て下さった
こと、私がナースカウンターの前のいすで休んでいると何人かの看護師さんが「**
さん、元気になってよかったね」とことばをかけてくださったこと、それにしてもどの看
護師さんも私の名前をきちんと覚えてみえることには私の家族もみなおどろき感心し
ていました。
私はお世話になった看護師さんの名前をすぐに忘れてしまって恥ずかしい。
次に掃除婦の方が毎朝すみからすみまでていねいにきれいにしてくださって「**さん名前、***と言われるの あたった」と明るく接してくださったこと。
配膳の係の方も、もらいにいかなければ、返しにいかなければ、と思っていると、先をこされてもってきてくださったこと。
おかげで辛いはずの入院生活の10日間は楽しく過ごさせていただきました。
改めて、先生方、看護師のみなさん、職員のみなさんに 心からお礼申し上げます。 ありがとうございました。
一生忘れることのできない名古屋ハートセンターのすばらしいことを。
私の娘も長男もハートセンターでお世話になります。 よろしくお願い申し上げます。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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