下行大動脈瘤の治療にはステントグラフト、略称EVAR(エーバー)をもちいて、なるべく切らずに治すようにしています。
その場合、足の付け根の動脈などから折りたたんだ人工血管を入れて、下行大動脈瘤まで進め、そこで瘤に内張りをつける形ですべて内側から直してしまいます。
そのため胸にはまったく創がつきません。
それによって痛みを減らし、より早い社会復帰や仕事復帰を図ることができます。
しかし、足の血管などが動脈硬化で壊れているなど、状況によってはその方法が使えないこともあります。
この患者さんは下行大動脈瘤の治療のため来院されました。
なるべくステントグラフトをと検討しましたが、血管が悪いため、外部の識者の先生にも検討していただき、通常の手術を行うほうが良いという判断となりました。
通常の手術では左胸を切って中へ入り、下行大動脈を人工血管で取り換えます。
その場合、ときおり脊髄神経がやられ、下半身がマヒになることが報告されています。
そこでさまざまな工夫を凝らし、脊髄保護にとくに力を入れて手術を行いました。
その結果、何も問題なく、順調に回復され、まもなくお元気に退院されました。
つぎのお手紙はその患者さんの奥様からのものです。
病院の御意見箱に入れて下さいました。
お役に立てて大変うれしく思います。
***********患者さんからのお便り************
他院で受診した時、医師から「あなたは手術しても車いすの生活になるよ」と言われ、主人と私はあまりのショックに目の前が真っ暗になりました。
そんな時、貴院を知り親切に対応して頂き藁をもすがる思いでやって参りました。
そして8/30、最善の方法で手術をしていただき、心配していたマヒもなく、今日退院を迎えることができました。
米田先生をはじめ、北村先生、深谷先生、木村先生、手術に携わったすべての皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。
そして明るく心が和むお世話をして下さった看護師さん、介護師さん、スタッフの皆様、本当にありがとうございました。皆さま優秀な方達ばかりです。
名古屋ハートセンターに出会えて本当に良かったです。
御意見箱へのご回答: この度は退院、本当におめでとうございます。
そして、このような御意見が頂けて、ハートセンタースタッフにとって
これ以上嬉しいことはございません。お言葉を胸に、今後とも日々の業務に励んで参ります。
この度は、お褒めのお言葉、ありがとうございました。
米田、スタッフ一同
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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