お便り77 大動脈弁狭窄症のエホバ証人の患者さん

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エホバの証人の患者さんは信仰上の理由から輸血ができません。

一般の方々には不思議なことのように感じられるかも知れませんが、信者さんにとってはいのちがけの、大切なことです。

Ilm10_df01001-s私たちは信仰の自由を尊重し、輸血なしでも患者さんをお助けできるよう、全力をあげています。

以下の患者さんはこのエホバの証人の信者さんで、大動脈弁狭窄症という、手術なしでは突然死することさえある心臓病のため私の外来へ来られました。

精密検査の結果、心臓だけでなく、肺もかなり悪いことが判りました。

その原因のひとつが肥満やメタボであることもわかりました。

心臓プラス肺プラス「メタボ」プラス絶対無輸血というのはかなり厳しい条件です。

しかし患者さんが生きるためには何とか手術を乗り切って頂く必要があります。

そのためさまざまな努力や工夫をしました。

まず科学的ダイエットであるローカーボダイエットで積極的に脂肪を減らし、横隔膜が動きやすいようにし、あわせて呼吸運動を毎日励行いただき、メタボと肺の改善に努めました。

1か月以上の時間をかけて十分に態勢をととのえ、肺機能も改善したところで手術に臨みました。

肺に負担をかけぬよう生体弁で短時間に大動脈弁置換術を行いました。

徹底止血して輸血なしでも大丈夫な状態を維持したことはいうまでもありません。

患者さんもしっかり頑張って下さり、手術のあとはとくに問題なく順調に回復され、術後10日で元気に退院されました。

以下のお便りはそのエホバの証人の患者さんからのものです。

患者さんといっしょに苦労して得た大きな成果はまた格別なものがあると思いました。

 

*******患者さんからのお便り**********

米田正始 先生へ

 平成24年8月31日に大動脈弁狭窄症の手術をしていただきました****です。

昨日術後1ヶ月の検診を北村先生にしていただきました。

順調に回復していて改めて米田先生、北村先生、深谷先生、木村先生、看護士の皆さん、ハートセンターのスタッフの皆さんに感謝しています。

米田先生に昨日はお会いできないと思っていましたが、お会いする事もできうれしかったのですが、ゆっくりお礼が言えずに帰宅してしまいました。

もっと早く米田先生にメールを送りたかったのですが遅くなってしまって申し訳なく思っています。

 7月2日に他の病院で弁膜症だと診断された時、実母を同じ弁膜症により術後1ヶ月で人工呼吸も一度も外れず66歳で亡くしておりましたので、弁膜症に知識と経験のある先生の診察を受けなくてはと思いました。

また私の信仰上の理由で無輸血で手術してくださる先生を探さなければなりませんでした。

家族がネットで米田先生のことを知り、また無輸血で私たちの仲間を手術していただいている事もわかり米田先生にお願いするしかないという思いで、7月23日に先生の診断を受けました。

7月2日に他の病院で弁膜症と診断されたときから比べると、一段と急激に調子が悪くなり歩くのもやっとという感じになっていて、先生に診ていただくのが数日遅かったら、命を落としていたのではないかと思うほどでした。

先生に始めに診ていただいた日に無輸血で手術していただきたいとお願いすればよかったのですが、その日は米田先生のお話を伺っているだけで精一杯で話しをできずにきてしまったので、先生たちをびっくりさせてしまい、申し訳なかったと思っています。

私の実母も弁膜症で手術した際に、大量に輸血をしていましたので、無輸血で手術する事がどれだけ先生方の手を煩わせ、大変かと言うことも母を見ておりましたので、よくわかっているつもりです。その上私は肺が悪いということもわかり、貧血もあり、体重も落とさなければいけないこともありと、二重三重に、お手間を取らせてしまいました。

そのような中で手術していただき、止血に十分時間をさいていただき、手術を成功させていただいたこと、生涯忘れません。

 FFPに関しても米田先生が私の信仰の自由を最後まで守ってくださり先生の懐の深さにただただ感謝しております。

 入院中はローカーボ食にしていただき体重を約10キロ落とす事もできました。

家ではなかなか痩せることもできませんでしたが、体重を落とすこともでき、今後元気でいるためにも頑張って体重管理をしていこうと思っています。

 米田先生と一緒に頑張ってくださった北村先生、深谷先生、木村先生にも改めて御礼申し上げます。

北村先生には、忙しく大変な中でも笑顔で励ましていただきました。私のつまらない質問にも応答していただき、色々な不安を取り除いていただきありがたかったです。

米田先生の良き理解者でまじめな深谷先生。始めは先生の事が怖かったけど、今は先生の回診が懐かしいぐらいです。深谷先生に一言もお礼を言えず退院してしまったので、今度お会いしてお礼を言わせてくださいね。

とても細やかで洞察力のある木村先生。CCUでは家族に丁寧に状況を説明くださり感謝しています。患者は先生に癒されていると思います。もちろん私もその一人です。

 看護士さん達にも大変お世話になりました。

特に手術室の下島看護士さんには、私の話しを忙しい中よく聞いてくださり理解を示してくださり大変助かりました。

病棟の大橋看護士さん、私の事情に本当によくご配慮くださって助けていただきました。ありがとうございます。

草野看護士さんは病室に入っていらっしゃるだけでを和ませていただき支えていただきました。ステキな笑顔に救われました。

大谷看護士さんは本当にお若いのに高いプロ意識をもってお仕事されていて、感動しました。

CCUを出た時から数日間男性の看護士さん(お名前を忘れてしまいごめんなさい)にも大変お世話になりました。お仕事大変な中でもとても爽やかでやさしい看護士さんでした。ありがとうございました。

他にも、検査してくださった先生方、栄養士さん、清掃や食事の際にお世話になったスタッフの皆さん、多くの皆さんにお世話になり、心よりお礼申し上げます。

 最後になりましたが、毎日お忙しい日々をお過ごしの米田先生。どうぞお体を大切にしていただいていつまでもお元気でいてください。先生に助けていただきたい患者さんはまだまだたくさんいるのですから。

 これからもどうぞよろしくお願い致します。

 平成24年10月3日

***********

 

あれから2年が経ちました。

私も名古屋での5年間の生活に別れを告げ、郷里にかんさいハートセンターを立ち上げました。

(註:現在は大阪市の医誠会病院と大東市の仁泉会病院にて勤務しております)

全国から多数の患者さんが心臓手術をもとめてお越し下さり、にぎやかにやらせて頂いております。

上記の患者さんからまたお便りを頂きました。

また外来でお元気なお顔を拝見したく存じます。

********患者さんからのお便り******

米田先生へ


2012年8月に手術していただいた愛知県の○○です。

おかげさまで元気に過ごさせていただいております。

先生に普通以上のご迷惑をかけ、たいへんお世話になり心臓を治していただけた今、米田先生に手術してもらえて “本当によかった”と改めて感じる今日このごろです。

奈良に1年に1度は米田先生の心臓チェックを受けに行きたいと思っていますのに、なかなか実行出来ないことを残念に思っています。

でも、健康第一でお元気でいて下さい。

先生を必要としている人間はますます多くなっています。

その人たちも助けてあげてほしいです。

この健康に日々感謝しています。

ありがとうございます。


2014.8.29

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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