バルサルバ洞破裂は大人の心臓病としてはそう多くはありませんが、修復に注意を要することが多々あります。
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たとえば大動脈弁が壊れつつあるときとか、右房や右室での修復に注意を要するときとか、さまざまな盲点があります。
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以下の患者さんは関西の病院でそのバルサルバ洞破裂に対して修復術を受けられました。
破れたバルサルバ洞瘤を大動脈側からと右房側から縫合閉鎖し修復されたようです。
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ところが、手術後まもなく、その縫合閉鎖部位がまた破れて心不全が発生し、それから思い余って私の外来へ来られました。
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手術を受けた病院ではどうにもならない、あるいは返事をもらえないなどで、見捨てられた形となったようです。セカンドオピニオンの病院ももとの病院に遠慮して、あるいは何か他の理由でとりあってくれないとのことでした。
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精密検査ののち、これは私たちが開発した大動脈基部修復の方法で、しっかりと強い組織を活用して完全修復するしかないと判断しました。
なにしろ、一度失敗したあとの再建というのは、野球でいえば4-0で負けている状態から試合を始めるようなものですから、結構大変です。
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しかし患者さんを救うためには着実に塁を埋め、逆転のタイムリーヒットを打たねばなりません。
そこで私たちの方法をもちいたのです。
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具体的には大動脈の壁(バルサルバ洞)はすでに瘤化しており弱いため、ここではなく、もっとしっかりした大動脈弁輪に糸をかけてそれでパッチを内張りとして縫い付けました。
これは大動脈基部再建だけでなく、大動脈弁輪形成と保護を兼ねたものです。デービッド手術やヤクー手術の経験が役立ちました。
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これだけで破裂したバルサルバ洞(つまり破れたところの入口側)は落ち着いたのですが、さらに右房側(つまり破れたところの出口側)から、三尖弁の弁輪をも活用して、もう一枚のパッチを縫着し、確実を期しました。
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術後経過は良好で、エコーでもバルサルバ洞の破裂による異常血流は完全に消えて正常化しました。
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患者さんはお元気に退院されました。
以下はそのお父さんからのお便りです。ご期待に沿うことができ、私たちも本当にうれしく思います。
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*******患者さんのお父さんからのお便り*******
名古屋ハートセンター
米田 正始 先生様
*****の父です
息子の*** 11月1日退院しました
この約3ヶ月の間 非常に不安な思い、辛い思いで過ごしてきました。
ですが 米田先生との出会い、ハートセンターさんとの出会いによって 本人、家族共々 幸せな気分になりました。
まだまだ 経過をみていかなくてなりませんが 私達にとっては 米田先生や名古屋ハートセンターの皆さんが付いてくれていると思うと心強く感じます。
また 検診等で 名古屋や奈良に行かせて頂きますので 今後とも宜しくお願いします
本当に有難うございました。
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上記のメールをいただき、このホームページに掲載してもよろしいですかとお聞きしたところ、ご快諾をいただき、さらに以下のメールを下さいました
**********お便り、その2***********
名古屋ハートセンター
米田 正始 先生様
****の父です
7月初旬 息子のバルサルバ洞動脈瘤破裂 発覚し 心臓の手術が必要 いきなりの電話でした
近くの病院で 比較的簡単な手術と聞き 任せる事にし 8月中旬に手術しました
ですが 術後4,5日で再破裂を聞かされ 再手術が必要とのこと 本人も家族も気分はどん底に落ちました
今の病院で再手術か 他の病院を探すかもわからなくなってる状態が続きました
セカンドオピニオンがスムーズに行く方もいらっしゃるかもしれませんが 私達家族は 初めはとてもためらいました
先生に失礼ではないのではとか それをする事によって 元の病院に戻りにくくなるのではとか 色々と悩みました
しかし どうしても納得いかず セカンドオピニオンをし 親切に対応をして頂きましたが 最終的には「前の先生は きっとご自分で治してあげたいと思ってますよ」と
断られてしまいました
セカンドオピニオンってなんだろうと思いました
いろいろ調べてるうちに 米田正始先生の事を目にしました
すぐさまメールで問い合わせしましたら 一度来てくださいと返事を頂き 先生と会うことができました
先生とお会いして 「手術を受けていただけるのでしょうか?」「受けますよ」一瞬で話が決まりました
涙が溢れたのは今でも忘れません
診察、検査入院、手術日決定、入院、手術とスムーズに日程を決めて頂き 本人、家族共 非常に助かったのが現実です
なぜなら 本人、家族で手術日を決めようにも 2度目ともなれば 決める事は 非常に難しい事だったからです
「断らない・待たせない・温かい」 名古屋ハートセンターのうたい文句 素晴らしいです
入院中に他の患者さんや家族の方とも お話しましたが みなさんいろんな悩みや不安な思いを持っていて
米田先生に相談できた事から ハートセンターでの手術を決意できたという患者さん、家族の方が多くいました
またみなさんは ここを(ハートセンター)見つける事が出来たことを幸運に思っていました
あと 先生方やスタッフの方々の患者さんへの対応も 非常に驚きました
会話にしても患者さん目線で 温かい対応でした (他の病院では 上からいろんな事 言われましたが)
この約4ヶ月の間 非常に不安な思い、辛い思いで過ごしてきました。
ですが 米田先生との出会い、ハートセンターさんとの出会いによって
本人、家族共々 幸せな気分になりました。
まだまだ 経過をみていかなくてなりませんが 私達にとっては 米田先生や
ハートセンターの皆さんが付いてくれていると思うと心強く感じます。
心臓の手術で困っている方は 全国、世界に数知れずいると思います
1つの出会いで それが解決されるでしょう
また 検診等で 名古屋や奈良に行かせて頂きますので 今後とも宜しくお願いします
本当に有難うございました
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その後も定期検診のため外来に年1-2度お越しい ただいております。
米田正始が2013年10月に高の原中央病院かんさいハートセンターを立ち上げてからは奈良へ来て下さっています。
心臓の調子も大変よく、血液の漏れも全くなく、正常所見です。
これからは前向きに活発に楽しい生活を送って下さい。
これも患者さんとご家族の決意と努力の賜物なのですから。
黙々と頑張って下さった患者さんとご家族に私は今も感謝しています。
なお私たちはどんなに経過が良い患者さんでも年一度は定期検診でフォローするようにしています。
かかりつけ医の先生と協力して患者さんに役立つことが多々あるからです。
***** 手術から3年の時が過ぎました。新年にメールを頂きました****
新年明けましておめでとう御座います
年1回しか お会いできませんが 本年もよろしくお願いいたします
ハートセンターにて 息子の手術が終え 3度目のお正月となりました
先生には 感謝の一言です
いろんな患者さまが 先生への感謝の気持ちを持っていることが (患者さんの声) よりよくわかります
感謝する側 される側 これも 人と人との 絆なのでしょうか
私たちも そういう事を大切にし 生きていきたいと思っております
短文では ございますが 米田正始 先生 今後ともよろしくおねがいします
**家 家族一同
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バルサルバ洞破裂への新手術から4年が経ちました。
この病気は比較的珍しいため手術経験をもつ心臓外科医は少数ですが、それでも4名の方をお助けできています
過日のAATS(アメリカ胸部外科学会)の大動脈シンポジウムの日本版でこのバルサルバ洞瘤形成の新術式を発表し、デービッド先生はじめ権威の先生方にお褒め頂きました。
これからますます多くの患者さんのお役に立てればうれしいことです。
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さて今年もまたメールを戴きました。
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お元気そうでなによりです
また外来でお会いしましょう
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**********術後4年目のお便り**********
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新年あけまして おめでとうございます。
今年もメールで申し訳ありませんが ご挨拶させて頂きます。
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先生の手術を受けて 4度目となるお正月を迎えさて頂きました。
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米田医院での診察から始まり 名古屋ハートセンターでの手術 高の原中央病院での検診 今では仁泉会病院での検診
と先生が我が家の近くに居る安心感 (ある意味 不思議なくらいです)。
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息子はもう大丈夫でしょうけど あの時の本人、家族の苦しみは 忘れてはいけない事だと思っております。
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それと同時に あの時 米田先生やハートセンターの方々に助けて頂いた感謝の気持ちも忘れてはいけないと思っております。
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何年たっても感謝の一言です。
有難うございます。
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あと前回の検診の日に 妻までお世話になり 申し訳ないです
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次の日 早速 山岸眼科様の方で診察して頂きました
お礼の方 遅くなり 申し訳ございません。
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また今年の秋に検診に行かせて頂きますので宜しくお願いいたします。
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**** 家族一同
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手術から5年が経ちました。現在は仁泉会病院の外来で定期健診していますが、お元気で心臓になんら問題なく嬉しいことです。今年もお手紙を頂きました。
******** 術後5年のお便り ********
今年も 新年の挨拶として メールを送らせて頂いたのですが
メールアドレスが 変わっているようで
病院の方の相談 お問い合わせの方に 送らせていただきました(いいのかダメなのか わからずに)
失礼いたします
新年明けましておめでとうございます
2012年10月 名古屋ハートセンターでお世話になりました **** 家族一同です
今年も無事に お正月を迎える事ができました
これも先生のおかげだと思っています (これは私たち家族だけでなく 数多くの家族が思っているはずです)
人間は 不思議なもので 普通に生活を続けていると あの時大変だったことも 薄れていくことがあります
これは 良い事なのか 悪いことなのかは 私にはわかりません
ただ親としては 正貴に対し あの事は 忘れ生活して欲しい
私達家族を救って頂いたことは 決して忘れる事のない事
時折 そういうことを 考えたりします
これも無事に生活を送れてるからなのでしょうか
先生への感謝の気持ちは 数多くの家族の気持ちです
先生の益々のご活躍を期待いたします
**** 家族一同
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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