最終更新日 2020年3月4日
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心臓手術のための検査は大きくわけて2種類あります。
1.ひとつは診断をより正確に、詳細につけるための検査です。
2.いまひとつはオペをより安全なものにするため、関係する全身あちこちの部分を調べるものです。
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◾️診断のための検査
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次のようなものがあります。これらの一部を組み合わせて調べます。
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①心電図:
心臓の電気的動きを調べ、
不整脈つまり脈の乱れや心臓の虚血つまり酸欠状態や心筋梗塞その他を調べます。
安全で痛くありません。
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②胸部レントゲン写真(エックス線検査):
胸の内外のさまざまな臓器を全体的に把握できます。
心臓や肺、気管支、肋骨、その他が大雑把にわかります。
わずかな放射線被ばくはありますが、安全で痛くありません。(右図)
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③血液検査:
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心不全の度合いやその変動がわかります。
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針を刺す痛み以外は快適です。
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④心エコー図:
弁膜症の決定的検査です。
狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患では心室の壊れ具合や二次的な弁逆流などもわかります。
心筋症、心不全でもどこをどう治すかを考えるために必須です。
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心臓の各部のサイズや機能あるいはドップラー法により血液の流れが詳細にわかります。
安全で痛くありません。
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⑤CT:
心室や心房、大動脈その他の構造や形態が正確にわかります。
冠動脈はじめ様々な動脈もわかります(左図)。
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被ばくはレントゲン写真よりは多いですが、工夫によってかなり減らすことができます。造影CTでは点滴の針をさす痛みはあります。
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⑥MRI:
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心臓の機能や形、心筋がどれくらい生きているか、さまざまな血管はじめ有益な情報が得られます。
あるいは頸動脈、脳動脈などを安全に調べることができます。
解像度はCTより劣りますが。被ばくの問題もありません。
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⑦RI:
心筋の虚血や状態、動きなどがわかります。多少の被ばくはあります。画像はぼやけておりあまり細かい形態は苦手です。
必ずしも必須検査ではありません。
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⑧心カテーテル検査:
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冠動脈の詳細を造影したり心臓内の圧測定には威力を発揮します。大動脈の中をカテーテルが通過するため、わずかな負担やリスクはあります。たとえばまれに脳梗塞などが起こります。
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弁膜症手術では手術前にカテーテル検査をすることがうんと減りました。
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◾️手術の安全のための検査
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およそ以下のものが代表的です
①血液検査:
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腎臓、肝臓、糖、脂肪その他全身の情報が得られます。
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近年はいろいろな病気を併せ持つ患者さんが増えたため、一層大切な検査になりました。
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②ABI: 手足の血圧を同時測定します。いかにも単純な検査ですが、これによって下肢の血流が良いかどうか即わかります。安全で痛くありません。
③肺機能検査:
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いわゆる肺活量試験とその関連検査です。ようするにしっかりと吹く、そういう検査です。
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安全性は高く痛みもありません。
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④CT: 胸部や腹部の大動脈の状態や、肺、その他内蔵に異常がないかを調べます。必要に応じて脳内動脈も調べます。再手術では心臓と周囲組織との癒着の度合いを前もって調べることで安全性が向上しました。多少のひばくはありますが、痛みはほとんどありません。
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⑤頸動脈エコー: 狭心症や大動脈瘤の患者さんなど動脈硬化があるケースでは頸動脈が狭くなっていることがあります。これをしっかり調べ、脳梗塞の予防策を講じます。
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⑥MRI:頸動脈や脳動脈、脳、全身の検査に有用です。
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⑦その他: 上記検査で何か問題があり、追加検査することは時々あります。
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このように、術前検査はしっかりとした診断をつけ、安全性を徹底管理するためにも重要です。
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通常の病院ではこうした検査と説明に4往復4週間もかかると言われますが、心臓血管センターではハートチーム全員で努力し、一回の外来で主な検査を終え、ご説明や生活指導をするようにしています。
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そのためには前もって予約して戴くとか、必要な検査を併せ受けて頂くことでスピードアップと患者さんたちの負担軽減が図りやすくなります。あるいは短期入院ですべて調べ上げるようにし、遠方の方々などに喜ばれています。
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以上、心臓手術前の主な検査について概略ご説明いたしました。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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