最終更新日 2020年3月27日
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◼️原発性の心臓悪性腫瘍とは
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心臓から発生した悪性腫瘍(がんあるいは肉腫)です。
大変稀で2000人に一人の頻度という報告もあります。
悪性中皮腫、肉腫たとえば血管肉腫、悪性リンパ腫などが代表的です。
さまざまなタイプがあり、またその発生部位や患者さんの年齢体力などに応じたキメ細かい対応が必要です。
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多くの場合、薬や放射線が効きづらく、手術が治療の中心となります。
しかしその一方、悪性リンパ腫の一部など、薬や放射線が効くものもあり、しっかり調べることが大切です。
悪性腫瘍の原則は心臓原発の悪性腫瘍にも当てはまります。
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◼️完全切除できる場合は、
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しっかり切除して、手術後の心臓機能が維持できるよう、再建を行います。
そのため多くの場合、体外循環(人工心肺)をもちいて、徹底的に切除します。
この場合、私たちの方針は、
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①腫瘍が冠動脈を巻き込んでおれば、冠動脈ごと腫瘍を全摘除し、その末梢側の冠動脈にバイパスをつける、
②左室や右室などパワーをだす必要がある部位は切除に限度を設けてあとの心不全が悪化しすぎないようにする、
③洞結節は必要があれば腫瘍とともに切除し、その分、ペースメーカーを入れて洞結節の肩代わりをする、
などで、要は完全切除を安全に目指すようにしています。
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これらは患者さんが生き延びるために必須であるために行うのですが、こうした完全切除の場合、体への負担も大きくなり、高齢者や体力がすでに低下している場合は要注意です。患者さんの状態に合わせた最適治療法を考えるわけです。
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◼️完全切除できない場合
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あるいはすでに転移している場合は、全身状態を改善し、なるべく苦痛少なく、なるべく永く生きられるようなやさしい治療を行います。
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たとえば心嚢内(心臓の周囲のふくろ状の膜で囲まれた空間)に水や液体が貯まって心臓の働きを妨げている場合、心膜に穴を開けるだけの心膜開窓術が患者さんの体力回復と症状緩和に効くことがよくあります。
水は胸腔へ抜けて吸収されるか、適宜針や管(くだ)などを入れて抜くこともできます。
ただこの場合、腫瘍の本体は手つかずのため、そのあと腫瘍が発育してくる恐れがあります。可能ならこのときに薬や放射線が使えれば少しは有利に傾くことがあります。
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心臓の弁や大動脈・肺動脈などが腫瘍のため閉塞しつつある場合は根治性がなくても救命措置として、人工心肺をもちいて腫瘍を切除することがあります。
この場合も長期間の予後には懸念があるため、さまざまな後治療を考えます。
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◼️腫瘍にはゆっくりタイプもある
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心臓原発悪性腫瘍には slow growing tumorというゆっくりと大きくなるタイプがあります。悪性といっても比較的穏やかなタイプです。
このタイプでは完全切除できずとも、年単位で生きることが可能です。
だからこそ、原発性心臓悪性腫瘍だからといって、あきらめたり自暴自棄になってはいけないのです。
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私のトロントの経験では「末期」と言われた状態から心膜開窓術のあと、3年半も元気に暮らした方がありますし、
名古屋でもあと1週間と言われて強い心不全状態で来院され、緊急手術で2年近く生存された患者さんがおられます(心臓手術事例)。
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◼️頑張りましょう
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このように米田正始が心臓腫瘍に経験が豊富なためか(トロント大学で多数経験したものを発表しました, 英語論文156参照)、原発性悪性腫瘍の患者さんが全国から来られる傾向があります。
(心臓手術・事例:右房全置換にて完全切除できた心臓腫瘍)
この手術治療に際しては、平素の弁形成術や左室形成術、血管手術の経験が大変役立っています。腫瘍を切除するために弁や左室や血管の一部を切除することがよくあるからです。
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悪性腫瘍はさまざまな科の専門家のちからを集める集学的治療が威力を発揮する病気です。
地元や他科・他病院の先生方と協力して、できるだけお役に立てるように努力しています。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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