あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願い申し上げます。
昨年、2012年はおかげさまで充実した一年でした
名古屋ハートセンターも開設から丸4年が過ぎ、心臓大血管手術も300例には及ばなかったものの、それに迫る実績をあげ、名古屋エリア屈指の施設に成長いたしました
これも多くの患者さんや開業医・内科・心臓血管外科の先生がたはじめ、院内の内科・外科・コメディカル・事務はじめとしたあらゆるチームメンバーの皆様のご尽力のおかげと深く感謝しております。
心臓手術数だけではなく、質的にも他病院で断られた再手術、再々手術、再々々手術例を始め、駆出率が10-30%つまり心臓のパワーが本来の半分から5分の1まで落ちたケース、心筋症やIHSSなどにみられる複雑な心室、冠動脈が病気でバイパスがつけられないと言われた患者さん、弁のあちこちが壊れて弁形成しづらいと言われた僧帽弁閉鎖不全症や僧帽弁狭窄症の患者さん、大動脈弁を形成で治さないと妊娠出産などの人生設計ができないというケース、その他さまざまな患者さんたちにお役に立てて医者冥利の一年でした。
また他病院で目いっぱいの手術治療のかいなく、術後経過が思わしくなく弁や左室が悪化し、どうにもならない状況からご来院いただき、出直しの再手術で元気になられば弁膜症や先天性心疾患の患者さんたちにもよろこんで戴けたことを光栄に思います。患者さんがお元気になられることで、元の病院への不満も解消し、このような形ででも同業者の方々に貢献できたのもうれしいことでした。
ミックス手術(MICS、小さい切開の、患者さんにやさしい手術)がさらに増え、私の執刀例ではほとんどのケースが何らかのミックス手術で、手術の内容や大きさだけでなく、その患者さんの年齢・状態やライフスタイルなども考慮して最適なものが選べる、ひとつのオーダーメイドのミックス手術に進化したのも昨年の成果です。20歳前後の若い女性患者さんたちにポートアクセス法を始めとしたミックス手術でこころの負担を減らすことができたのもうれしい想い出です。
もちろん地域医療のなかで、夜中などに生きるか死ぬかの状態で救急車搬送された多数の患者さんたち、とくに急性大動脈解離や大動脈瘤破裂の患者さんたちにも私たちを信じて頑張って下さったことを感謝申し上げます。
しかしその一方、あらゆる手を尽くしても救命できなかった患者さんも若干あり、深いお詫びと反省、検討と近い将来同じ病気・同じ状態の患者さんをぜひとも救命できるよう、チーム全員で努力しております。お助けできない患者さんがおられる以上、その改善や解決に向けて十字架を背負って生きて行く自覚を忘れないようにしています。
こうした努力の結果を内外の学会やシンポジウム等でも発信することができ、多くの仲間たちのお役に少しでも立てたのであれば、大変幸甚なことです。
たとえば昨年10月のヨーロッパ心臓胸部外科学会(バルセロナ、Segesser先生が会長)で新しい手術のセッションで、私たちの手術(機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する乳頭筋最適化・僧帽弁形成術)を発表し、ぜひ使ってみたいとのご意見を頂けたこと、あるいは3月のアジア心臓血管胸部外科学会(バリ島、畏友Hakim先生が会長)のシンポジウムでも同様によろこんで戴けたことを光栄に思います。ヨーロッパやアジアの先生方に、是非この手術を使いたいと言っていただき、ビデオをお贈りしたりご説明したりと、海外の友人仲間に貢献できるのはまさに至福の時でした。
国内でも7月の冠動脈外科学会(防衛医大前原先生が会長)、9月のMitral Conclave(慶応大学の四津先生が会長)、10月の日本胸部外科学会、11月の日本弁膜症学会(慈恵医大の橋本先生が会長)やCCTなどでも同様の貢献の機会をいただき、厚く御礼申し上げます。私のチームの若い心臓外科医諸君も大きなシンポジウムで発表でき、より自覚と誇りをもってくれたのも大きな収穫でした。国内学会ではしばしばVSP(心筋梗塞後の心室中隔穿孔)のセッションの座長を仰せつかるのですが、いつも前向きの議論をワークショップ風に進めていけるのを楽しんでいます。今、若い先生方にも安心して使って頂ける新しい手術法を開発しています。
共同研究をしていただいている川崎医大の先生方がAHA、ACC、ASEはじめ名だたる国際学会でその成果を発表したり、なかには向こうから乞われて講演したものもあり、日頃の努力が評価されたこと、大変うれしいことです。
ひるがえって毎日の仕事のなかで、患者さんや職員の皆さんとの対話の時間をもっと持ちたく思いながら十分にはできていないという反省がつのります。時間が物理的に取れないなら、せめて質を上げて、短時間でもしっかりと聴く、これを今年はもっとちからを入れて実行したく思います。
患者さんの悩みも多岐にわたります。心臓手術によって心臓は元気になっても、体の他の部分のさまざまな悩みやご家族とのこと、社会経済的なことなど、自分の領域を超えた悩みにも何かできることはないか、考えてしまいます。心臓病だけ治してもダメということをこれまで以上に実感することが増えました。できるところから手をつけていこうと思っています。
そういえば病院のコメディカル諸君が主体的に研究テーマをもち、患者さんの役に立つ研究をやろうという機運が生まれ、昨年はヨーロッパのエコー画像の国際学会で発表してくれた放射線技師さんや、国内の大きな全国学会で看護研究を発表し優秀演題賞を受賞してくれた看護師さん、MEさんの大きな学会で講演してくれた技師さん、新しい知見を報告してくれた検査技師さんなど、まさにチーム医療を担う若い諸君の活躍が始まったのも大きな収穫でした。やはり仕事は面白くなくてはいけません。汗や涙を流してでも楽しくなければならないのです。そうしたお手伝いをこれからもっとできれば、おのずとその成果は患者さんに還元できると思います。
思いつくままに昨年の努力とちょっぴり成果をお書きしましたが、こういう雰囲気で今年も皆で汗をかきながら走りたく思います。皆様のご指導やご鞭撻を頂けましたら幸いです。
2013年1月1日
米田正始 拝
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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