奈良市エリアでの病診連携

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高の原中央病院にかんさいハートセンターを立ち上げて5ヶ月が経ちました。

とりあえず心臓血管外科だけで出発したのですが、お陰さまで当初から毎週3例ずつ心臓手術を着実に行い、すでに奈良県下屈指の心臓外科施設と言って頂けるようになり、皆様に感謝申しあげます。

この5か月間の経験のなかで、病診連携について、ちょっと思ったことをお書きします。

それは他エリアたとえば名古屋と比べて病診連携が少ないという印象があることです。

私は奈良県生まれの奈良県育ちとはいえ、永い間奈良で仕事をしていませんでしたので、県内の病院医院の事情はまだ十分勉強できていないと思います。しかしそれでも立派な病院や医院が多数あることは知っています。

にもかかわらず、患者さんたちはかかりつけ医の良さを知らない、そういうケースが大変多いように思うのです。

具体的に、ほぼ毎日経験するのは次のシーンです。

私 「かかりつけ医はお持ちですか?」

患者さん 「はい、高の原中央病院です」

私 「、、、、、」

患者さん 「何か問題でも?」

私 「あなたはこの病院の心臓血管外科、循環器内科、消化器内科、外科、神経内科、皮膚科、形成外科に通っておられますね?」

患者さん 「はい。それに眼科にもかかってます」

私 「なるほど。じゃ、インフルエンザのワクチンとか骨粗しょう症の治療はどうしてますか?腰痛もあるようですしメタボもある。薬だけでなく食事療法とか運動療法はやってないのですか?」

患者さん 「、、、、、」

私 「そもそも血圧関係の診察もときどきしか受けていない」

患者さん 「そうです、3か月に1回、お薬をもらっています」

私 「血圧の記録は?」

患者さん 「デイサービスのときに測ってもらってます」

私 「昼間、とくに運動後は血圧が下がるので安全確保には役立たないことがあります。家庭早朝血圧が一番役立つのですが、、、」

患者さん 「、、、、、」

私 「がんの早期健診は?」

患者さん 「胃カメラだけ近くの病院で受けていますが、、、、」

 

こうした患者さんたちは、大病院の多数の科を回り、なおかつ穴だらけ、待合だらけの病院通いを続けておられるのです。患者さんたちの言い分は、「開業医さんは頼りにならない、以前につらい想い出がある」というのが少なくありません。

そこで大病院の多数の科を「かかりつけ」代わりに使うことの無駄と盲点を話し、現代の開業医の先生方によるかかりつけ医の利点を話し、さらに大病院の専門家と親しみやすいかかりつけ開業医のコラボレーションがどのように便利で強力で安全かを延々と話しています。

患者さんにおかれましてはご自身の健康と生活を守るために「医療を上手に活用する達人」になって頂きたく思いますし、開業医の先生方におかれましては「大病院ではできない、開業医ならではの威力を発揮するコラボレーションと患者啓蒙」にさらにちからを入れて頂きたく存じます。

なお心臓以外の領域のご専門の開業医の先生方には、私どもがしっかりサポート致しますし、多少でもご心配な折にはいつでも患者さんに受診して頂ければ幸いです。必要に応じて勉強会検討会などをもったり、一例一例で心臓管理のノウハウが蓄積できるよう、ご協力をいたします。

近々、かかりつけ医の先生方のための心臓講座(仮称)として心エコーや心電図、ワーファリンの使い方テクニック、心血管系の薬の実践的使い方などを考えております。

患者さん、ご家族、開業医の先生方、病院の関係者が一体となって良い地域医療を造れればと思います。皆さんよろしくお願い申し上げます。

 

平成26年2月27日

高の原中央病院かんさいハートセンター

心臓血管外科

米田正始 拝


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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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