最終更新日 2020年2月28日
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◾️心臓再手術の回数の限界は
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これはその患者さんの体力や心機能、おかれている状況によっても異なります。
私自身の経験は6回目までで、心臓手術そのものは十分できます。
そもそも再手術の難しさとは次の諸点が考えられます。その難しさは再手術の回数に比例して増えるという印象があり、しっかりと取り組むことが大切です。
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◾️心臓再手術の問題点
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1.心臓や大動脈が胸骨や肺と癒着していて、そこをはがすときに出血する恐れがある。さらに術後にじわじわと出血が続くことがあり得る。
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2.以前の心臓手術のためと、初回手術より長い病悩期間のため心機能や全身のちからが低下しているかも知れない。年齢も一回目より高いことが多い
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3.以前の手術で切除した組織があると、その組織欠損が再手術の障害になることがある
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などですね。いずれも多数回再手術では大きな問題になりがちです。
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◾️それら問題への対策は
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1.に対 しては高い剥離技術でかなり対処できます。胸骨正中切開はピタリのところで骨だけを切ることが大切です。それにはソー(のこぎり)の特殊な使い方が役立ちます。
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剥離についてはかつては電気メスとはさみで行いましたが、現在はそれにハーモニックメス(微振動で熱を出して切るメス)が加わり、術後の出血も抑えやすくなりました。これも正しい表面で剥離する技術が大切で、組織をできるだけ傷めないことが術後の出血を減らすことにつながるのです。
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しかし大動脈が胸骨に食い込んでいるようなケースでは、その胸骨をのこぎりで切る操作じたいは昔と同じなので相応の工夫が必要です。十分工夫はできるのですが、そのために体外循環時間が延びる場合は2.の体力の問題が発生するため、多角的に考えて対処する必要があります
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2.については、ポイントを押さえて効果的かつコンパクトな、したがって短時間に仕上げる心臓手術が良いでしょう。止血には時間をかけても良いのですが、心臓を止める時間や体外循環時間はできるだけ短くしたいものです。
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3.は手術手技の工夫で対処します。組織欠損があまりにも大きいのはやや不利ですが。
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◾️総じて
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こうした努力と工夫の積み重ねで再手術は6回目といえども可能です。なお前回の手術を私たち自身が行っている場合の再手術はそれだけ楽で安全性が高くなります。というのは将来の手術を考えて、心臓や大動脈が骨や肺などと癒着しないように、心臓と周囲組織の間にバリアーを作るなど十分な配慮をするからです。再手術はじつは前回手術から始まっているわけです。患者さんの遠い将来まで見据える手術、これが安全性の向上に役立つと信じます。
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ともあれ誰も好んで再手術などしたくはないのですが(初回手術のほうがよほど楽です)、それしか患者さんの救命の道がないというときにはぜひともやらねばなりません。
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これまでに3回目から5回目の再手術をも多数行っています。現在の医誠会病院でも同じポリシーで頑張っています。元気に退院して行かれる患者さんのお顔を拝見し、喜びもひとしおです。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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