この歳になりますと同窓会がこれまで以上に楽しみになります。
小学校、中高、大学いずれの同窓会も同じです。
芝蘭会というのは京大医学 部の同窓会ですが、京大らしくていいなあと思うのは出身大学にかかわらず、大学院や関連病院で同じ釜の飯を食べた先生方を分け隔てなく遇し、一緒に楽しめることです。
私が5年間お世話になった名古屋を去り、郷里の奈良に高の原中央病院「かんさいハートセンター」を立ち上げたのは昨年10月でした。ことし初めて芝蘭会奈良県支部総会に会員として参加させていただくことになりました。
この会には私なりに熱い想いがあります。数年前、京大病院でトラブッていた私を講演に呼んで下さり、激励していただいたのです。英語で誰もが知っている A friend in need is a friend indeed. まさかの時の友こそ真の友、という諺を想いださせるような経験でした。今でもその時の会場であったレストランへ行くと、何だか心温まるような気持ちになれるのです。
ともあれこうした会ですので楽しみにしていました。
懐かしい、かつてお世話になった天理よろづ相談所病院の先生方をはじめ、村田医院、坂口医院、大和高田市立病院、岡谷病院、土庫病院、大和郡山病院(昔の奈良社会保険病院)、高井レディスクリニック、東大寺福祉療育病院、西大和リハビリテーション病院その他の病院の先生方と再会でき、うれしく思いというより感謝の念で一杯でした。
郷里でこうした先生方のお役に立って心臓外科医としての人生を締めくくりたいとあらためて思いました。(皆さん、心臓病や血管病でお困りのときにはぜひとも救命したく、救急車でお迎えに参ります!)
恒例の特別講演では京都大学腫瘍薬物治療学の武藤学先生が京大病院がんセンターでの新たな試みをお話されました。集学的、横断的に、さまざまな科というより臨床も基礎も含めた総合戦力で患者さんを軸として動けるシステムを構築しておられるのを知り、感嘆いたしました。iPS細胞などのサイエンスを基盤にした研究、学際的スタッフによるスーパーコンピューターをもちいた臨床研究から近隣の病院群とタイアップした緩和医療まで取り組んでおられるというのは圧巻でした。
昔からプロのClinical Oncologistが必要という声が多かったのですが、武藤先生こそがそれであり、がん治療のハブそのもので、これは大きなインパクトになるものと思いました。
ひとつ余計なコメントをしてしまいました。がんではなく救急や循環器関係のお話ですが。中部地方の大学で、救急医療、地域医療、そのネットワーク、コンピュータを駆使した連携システム、ドクターヘリも含めた高度かつ機動力をそなえた体制など、見事な医療体制を構築しておられる大学の先生が講演されたとき、ひとつ聞いてしまいました。「これほど立派な医療システムを構築しておられる先生の大学病院で、しかも優れた心臓外科医がいるのに、なぜ年間数十例しか心臓手術ができないのですか?」と。答えは頂けませんでした。ほとんど絶句状態ですね。これが日本の大学病院の二面性なのです。もっともこれは循環器などの大学病院が苦手とする領域の話で、がんのような、本来集学的、学際的、横断的でかつ循環器ほど緊急態勢が要らない領域ではこれから大きな改善が期待されます、と。
重要課題とはいえぶしつけなコメントに対して武藤先生は後で真摯にお答えくださいました。さすが、プロのがん専門家は違う、あらためて同先生が構築して行かれる新しい大学病院のがん医療が楽しみになりました。
会には京大の学生さん、正確には芝蘭会雑誌部の部員さんも複数、取材のために参加しておられました。実は私も昔、雑誌部で同様のことをやった想い出があり、思わず激励してしまいました。雑誌部員がすごいのは、京大総長レベルの大先輩にも正面から話ができることです、ぜひその特権を活用して、多くを学んで下さい、とお願いしました。
皆さんと歓談しているうちに時間が来てしまいました。来年もまたよろしくお願い申し上げます。支部長の松村忠史先生、お世話下さった大和高田市立病院の砂川昌生先生、ありがとうございました。
ブログのトップページにもどる
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。