京都大学ESS(English Speaking Society)は歴史のある、代々の部員の情熱に支えられた手作りの部という印象を持っています。私は大学の1回生の後半から3回生の途中までお世話になりました。ある先輩からこれからは海外で活躍すべき時代だから学生時代に英語を本気で勉強しておきなさい、と言われて、英会話学校よりも深く探求できそうな場を探しているうちに京大ESSに辿りつきました。
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私がお世 話になった1976年から1978年までの頃(かなり昔のことで恐縮です)は、まだ素朴な時代でした。教養部(現在の総合人間学部、吉田南構内)で吉田グラウンドの前にA号館という「回」の字型の大きな建物がありました。現在でいう吉田南総合館ですね。その「回」の中央部に木造2階建ての古びた戦前?の建物「中央館」が京大ESSの根拠地でした。
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根拠地と言ってもクラブBOX(部室)が認められていたわけではなく、ジプシー生活のクラブでしたが、それでも毎日昼休みにdaily practiceとしてSpoken American Englishを練習し、夕方にまた集まってはさまざまな活動をしていました。
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当時の活動は大きくわけて Debate(ディベート、テーマを決めてチーム同士で議論しその内容を競うことで問題の理解を深め解決策を図る知的ゲーム)、Drama(ドラマ、英語劇で当時の府立勤労会館でにぎやかに公演しました)、Discussion(テーマを決めて議論する、フォーマルとインフォーマルがある)、Speech(時間内で内容と説得力のあるスピーチをし、そのレベルを競う)などがあり、京大ESSの特徴はやりたい人はどれをどれだけやっても良いという utility playerとして自由参加ができたことです。まだ小規模のクラブであったためもあるのでしょう、やる気のある人はかなり没頭できる体制でした。
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夢中で何でもこなしたように思います。やりすぎてご迷惑をかけたことを今、反省しています。その後、昔の仲間が集まる機会が多少はあり、楽しくうれしいことです。
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この京大ESSで学んだことはその後の人生で大変役立ちました。英語それも考察し、ディスカッションし目的を達成していく英語とは、海外留学でさまざまな課題をクリアーしながら心臓手術の腕を磨き、研究業績を上げていく過程で必要不可欠ともいえるものでした。それを学ばせてくれた京大ESSとその先輩・仲間たちには今なお深く感謝しています。
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それ以上に有意義であったのは他学部に友人が持てたことです。せっかく立派な総合大学に行っても、全学の人たちと交流する機会が持てないというのではあまりに寂しくもったいない、当時からそう思っていましたが、振り返って京大ESSの経験はじつに貴重なものでした。
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最近の京大ESSの雰囲気は詳しくは存じません。しかしあの活気、仲間が集まれば何でもできる、良いものを努力と工夫でどんどん造っていける、そして想いは世界へ、そのような若者ならではの夢のある活気が今も根付いていることを信じています。
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京大ESSの現役諸君とOBの皆様、またお会いできるときを楽しみにしております。
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平成26年8月4日
米田正始 拝
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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