今年も恒例のチャレンジャーズライブ予選会が東京と大阪でありました。
この会は10年あまり前から、京都府立医大の夜久均先生をはじめとする心臓外科医仲間が集まって、若手を全国規模で鍛えよう育てようという趣旨で発足しました。
毎年多数の参加者があり、すでにこのチャレンジャーズライブ出身者が立派な施設長にまでなっているというケースもあります。
私は大阪での予選会に審査員として参加しました。
当日は夜久先生、名古屋第一日赤の伊藤敏明先生、名古屋第二日赤の田嶋一喜先生、岸和田徳洲会病院の東上震一先生、心臓センター榊原病院の坂口太一先生らといっしょに楽しく指導させて頂きました。
卒後10年以内の心臓外科修練中の若手が午前中は審査員との懇談・指導下に冠動脈バイパス手術の練習を積み、午後は剥離と吻合コンテストで大阪地区代表2名が選ばれます。
今回から畏友 Ikonomidis J(トロント大学以来の親友)とこれまた旧友 Fann J(スタンフォード大学病院で同じ時期に学びました)が出した心臓外科トレーニングの論文での基準を取り入れて審査することになりました。といってもこれまでの和製基準が良くできていたため、内容的には大きな変化はありませんが。
以前とくらべて年々その技術レベルが上がっている感があり、参加者は年齢制限のため変化しますので日本の若手そのもののレベルが上がっていると思います。
多くのひとたちは上手に吻合していましたし、中にはスピードもなかなか立派なレベルに達しているひともありました。
前向きな立場から今後の改良点をいくつか挙げてみます。
1.冠動脈の剥離操作は縦方向に少し皮をはいでから横方向の剥離に入るように。でないと繰り返し操作がつづき時間がかかりすぎる。
2.冠動脈の横を裏側近くまで剥離するひとがあり、それは吻合時に冠動脈をコントロールしづらくなる
3.吻合口のサイズを適正に
4.針の角度が悪く、血管壁に垂直に針が刺さらない
5.最初グラフトを吻合部から離れたところに置きすぎて苦労している
6.吻合中、吻合部エッジが内側向かないように、糸が外にあるときに引っ張る
7.トウを早く回りすぎる。ひとつ間違うと吻合部狭窄になる。
8.トウをはじめ、展開が不十分。
9.手の震えのコントロール
10.安全にワンアクションで縫えるところをツーアクションにしている。時間がかかり成績も落ちる心配あり。
11.吻合の歩みにばらつきがあり、トウの部分がやや雑になっている
12.内膜が内腔に少々突出気味のケースがあった
13.実戦志向の技術だけでなく、ウェットラボ志向の技術を感じたケースがある
しかし総じて皆 さんうまく、日々の練習努力のあとがうかがえる方も少なからずおられました。
若手医師の多くが楽な科を選ぶ今日、厳しくてもやりがいのある心臓血管外科を選択された諸君は、その志からすでに立派と思います。こうしたひとたちが大きく成長展開するよう、支援をするのが私たち指導者の責務であることをあらためて感じた一日でした。
皆さんこれからさらに成長して行ってください。今日は皆さんのエネルギーを頂きました。ありがとう。
平成26年11月2日
米田正始 拝
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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