最終更新日 2020年2月24日
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◾️昔は大きな傷跡は良い事だと
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心臓手術はかつては 傷跡が大きいもの、というのが常識でした。
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40-50年ほど昔、なにしろ生き残ることができれば良しとしよう!というレベルからのスタートだったからです。
胸骨正中切開といって約25センチ長の傷跡が胸の真ん中に残りました(右図)。
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◾️傷跡が小さいミックスの時代に
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その後心臓手術は日進月歩、安全性が高くなり、術後のQOLつまり生活の質が問われるようになって傷跡が目立たない手術つまりミックス手 術(MICS)が脚光をあびるようになりました(左図)。
左写真はMICS心臓手術後の傷跡です。
女性の場合は乳腺の下にあるしわのところで皮膚を切開するようにしているためほとんど見えません。
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その詳細はこちらのページをご参照ください。
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◾️傷跡が小さい手術の盲点・注意点
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ここで大切なこと、それは十分な安全性の確保のうえのミックス手術でなければならないということです。
言い換えれば、高い技術と熟練度が確保されていることが大切です。
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私たちは高々4年あまりの間にポートアクセスの本格的ミックス手術を160例近くこなした、熟練チームです。現在は毎週行っています。
たとえば写真右は僧帽弁形成術と大動脈弁形成術を同時にミックスで行った患者さんの傷跡です。
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僧帽弁形成術を例にとってみれば、ミックス手術をやっていると言ってもごく簡単な形成だけしかやっておらず、それ以上の手術では通常の大きな傷跡でやっている病院もあります。
これは心配です。術中に何か小さいトラブルでもあれば対処できないという恐れが多分にあるからです。
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私はかつて修練時代に恩師からこう教えられました。一段上の手術ができるようになって初めて普通の手術ができるのだ、と。つまり何か想定外のことがあっても、余裕をもって対処できる、ということです。
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◾️美容目的だけでないミックスも
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美容目的や早期の仕事復帰、スポーツ復帰、クルマ運転再開などのために骨を切らず傷跡が目立たないミックス手術を行うことが多々あります。
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しかし私たちは純粋に安全性を高めるためのミックスもやっています。
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たとえば5回目の心臓手術でアプローチできないほど強い癒着があるときに、それを避けるルートとしてのミックスですね。こうした重症患者さんを救命するためのノウハウの蓄積が普通の患者さんの安全向上に役立つと思うのです。
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患者さんにおかれましてはこうしたことも考えて病院を選ばれることをお勧めします。
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お問い合わせはこちらへ
患者さんからのお便りのページへ
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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