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いい心臓・いい人生 【第108号】 アメリカで発表して参りました — その2
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発行:心臓外科手術情報WEB
http://www.shinzougekashujutsu.com
編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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天候が不順なこの頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。ゴールデンウイークの
疲れは取れましたでしょうか。
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米国胸部外科学会AATSの報告記その2です。
この学会はアメリカの医療だけでなく世界の医療を支援するという、アメリカ人
らしい誇りに満ちたところがあり、その志は随所に見られ、感心することが多い
です。
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今回の会長はカメロン先生で長年名門デューク大学で大動脈基部などの手術で
貢献して来られた先生です。いつも笑顔で親切、質問にも丁寧に答えてくれる方
で、日本も大好き、名刺に日本語で名前を書いているほどの方です。
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そのカメロン先生の会長講演では、「優しく」がテーマで、難しい手術を
てがける心臓血管外科医として血管や弁などの組織を優しく扱うことが
どれほど重要かをまず話されました。組織を乱暴に扱う外科医は組織がちぎれ
たり、糸が外れたり、あちこち出血だらけになって悲惨な姿になることは周知
の事実ですので、大動脈基部の比較的難しい手術を中心にしておられるカメロン
先生ならなるほどと思いました。
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話はそこから患者さんや周囲の仲間たちへの優しさへと広がり、なぜカメロン
先生がいつも皆に笑顔で親切であったか、理解できたような気がしました。
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ふと自分のことを考えると、自分は患者さんに対してはひと一倍というより5倍
以上優しくして来たつもりです。患者さんが何かからだに悪いことをした場合は
患者さんに怒ったこともありますが、それは家族を助けるときに怒るのと同じ
気持ちでした。私が病院を異動したときも、患者さんが遠方へ引っ越しされた
あとも、患者さんたちがついて来て下さったのは大変うれしいことでした。患者
さんの熱い支持があれば医者としては立派と思っていました。
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しかし自分が仲間たち、たとえば看護師さんたちに患者さんに対するほど優しく
接していたかを考えると、できていなかったと認めざるを得ません。自分が24
時間365日患者さんのそばにいるわけではないことを考えると、仲間たちを
がっちりサポートできないようではダメということですね。これから姿勢を
かえようと思いました。
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たまたま昨年度の会長、畏友サント先生と話する機会があり、彼の会長講演も
今年のカメロン先生と同じ方向性の話で、彼もまた皆に親切、いつも笑顔で
サポートというタイプの方なので、やはり心がけが優れていると同じ雰囲気
になるのだと知った次第です。
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今回のAATS学会では自分たちの成果を発表するだけでなく、手術や治療の
成果をいくつも学ぶことができました。重症心不全とくに機能性僧帽弁閉鎖不全症
や虚血性僧帽弁閉鎖不全症、拡張型心筋症や虚血性心筋症などでは2年続けて
発表しているように彼らをリードしているのも具体的にわかりました。
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それに加えて患者さんの安全をどう確立するかというセッションにも参加し、
米軍の指導者の話に感心しました。
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軍隊ではちょっとのミスや誤解が死を招く、という意味では手術室と似ている、
というところから始まった話です。高いレベルの手術をするためには、信頼と
気風(精神)、敬意、コミュニケーション、そして標準(ルーチン)が確立しない
といけないという話でした。そこにauthenticity(信頼できること、確実性)や
accountability(責任)、成長やコンセンサスなどが大切ということでした。卑近な
表現をすれば仲間を患者さんレベルで大切にする、なれ合いではなく仲良くなる、
それによって意見を出してもらいやすくする、などからのスタートということ
でしょうか。
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このセッションでは上記のサント先生も講演しておられ、negativeな批判ではなく
前向きのpositiveな意見で進めていこう、それがやりやすい雰囲気を作ろう、とくに
リーダーである外科医が率先してそうしようとのことでした。立派な友人に囲まれる
というのは幸せなことであると実感しました。
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恩師デービッド先生やワイゼル先生、トロントの仲間たちともゆっくり話ができ、
私の手術(乳頭筋の前方吊り上げ、PHO手術)をトロントで是非使いたいと言って
頂いたのも光栄なことでした。
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あっという間に過ぎ去った充実の4日間でした。機会をくださった医誠会病院の皆様方
に感謝申し上げます。
帰国して早速、大変な手術を皆さんのおかげで笑顔で乗り切り、成果を感じています。
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平成30年5月12日
医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
米田正始 拝
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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