最終更新日 2022年2月4日
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◆心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症とは?
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僧帽弁閉鎖不全症の中で、弁そのものは悪くないのに弁逆流が発生する、そんな病気があります。これを機能性僧帽弁閉鎖不全症と呼びます。
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一番良く知られて入るのは、心筋梗塞の後などの心不全のために左室の形が丸くなり僧帽弁が歪んで起こる虚血性僧帽弁閉鎖不全症です。これと同じくらい知られているのは拡張型心筋症などのために心不全になり、左室と僧帽弁が歪んで起こる機能性僧帽弁閉鎖不全症です。
虚血性僧帽弁閉鎖不全症は機能性僧帽弁閉鎖不全症の一つという位置付けになります。
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そこへ新たに知られるようになったのがこの心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症です。これは僧帽弁そのものは壊れていないのですが、長期の心房細動のために左房が拡大し、それに引っ張られて弁輪や後尖が左室外側にずれ(ハムストリング現象と呼びます)て、発生します。後尖が不足気味になり、それを補うために 前尖が真っ直ぐになり、それでも足りなければ逆流(閉鎖不全)が発生します。これが心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症なのです。
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◆どんな症状が?
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まず元々の病気である心房細動の症状があります。胸がドキドキ・パクパクする動機や、それによる運動時の息切れなどから、逆流が増えてくればより息切れが起こりやすくなったり疲れやすくなります。心不全症状ですね。これが悪化すると起座呼吸つまりベッドなどで横になると息苦しくなり眠れなくなります。これはすでに危険な状態です。
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◆どうやって見つけるの?
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心臓外来の普通の検査、つまり心電図、胸部レントゲン写真、心エコーと血液検査などでわかります。ただこの心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症は医師の間でも必ずしもよく知られていないため、単に不整脈とか僧帽弁閉鎖不全症と言われることもあるかも知れません。なるべく心臓・循環器の看板をあげている外来が良いでしょう。
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◆治療は?
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心房細動の治療をまず行いますが、すでに僧帽弁閉鎖不全症が強くなっていれば、手術が必要になるかも知れません。しかしこの病気を熟知している先生でなければ、もう少し経過を見ましょうとなることが少なくないのです。
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一旦心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症の診断がつき、これが高度で心不全が発生している場合は手術が必要になります。
僧帽弁形成術に熟練した心臓外科医ならこの病気は弁形成は比較的やりやすいことが多いです。
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僧帽弁形成術にいつも使うリングを弁輪に植え込むだけで逆流は治ることが多いです。ただ後尖が二次的変化を来して縮まっているなどの場合はそれへの対策も必要になります。これらは難易度としてはそう高くありません。
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ただこの心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症はもともと心房細動が原因のため、三尖弁閉鎖不全症を伴っていることが多いのです。
そこでこれらを全て治すことが大切です。
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◆私たちが進める手術は
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でも僧帽弁形成術と三尖弁形成術だけでは不十分なことが多いのです。巨大になった左心房と右心房も直さなければ予後つまり寿命の改善は不十分になりがちです。巨大左房のままでは血液がよどんでドロドロになり脳梗塞なども起こりやすくなります。
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そこで私たちは10数年前に開発しアメリカで発表した心房縮小メイズ手術をこの心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症に活用しています。これによって病気の根本をできるだけ治すようにしています。この手術をもっと知るには→→英語論文169番
この考え方は、2019年2月の日本心臓血管外科学会でのこの病気をめぐるシンポジウムでも、イギリス・オックスフォード大学の大御所・Francis Wells先生が、私たちの論文を引用しつつ「弁形成だけでなく心房縮小が大事です」とコメントされたことからも裏付けられました。
さらにこれを傷跡の見えにくい、骨も切らないMICS(ミックス)で行うようにしています。
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担当医の先生に心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症と言われても、冷静に、しっかりと考え、また相談する、これが大切です。治せる病気だからです。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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