いい心臓・いい人生 【第123号】 アジア弁膜症シンポジウム(3)

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いい心臓・いい人生 【第123号】 アジア弁膜症シンポジウム(3)
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発行:心臓外科手術情報WEB
http://www.shinzougekashujutsu.com
編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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アジア弁膜症シンポジウムの3日目、会場付近の紅葉がもう少し進んで秋の京都らしい
雰囲気になって来ました。(本日のメルマガも医療者向けですみません。ただし
弁膜症や心筋症・心不全をお持ちの読者には参考になるかも知れません)

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近年日本でも話題のテーマが多い一日でした。
Dr. Susupaus Attapoomが大動脈弁形成術の現況を概説しました。eH、GH、AVJなど
エキスパートの間ではすでに知られたことが多かったのですが、良くまとまっていました。
Dr. Kaushal Pandyが大動脈基部手術の基本とも言えるベントール手術を概説しました。
私の恩師が開発したデービッド手術の時代でも、なおベントール手術は最後の砦として
価値あるものと再認識しました。

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中国のDr. Tian Xiang Guは二尖弁の様々な特徴を開設しました。二尖弁のタイプ
例えばR+N型とR+L型では大動脈病変の起こり方が違うことを示されました。大動脈
側の要因と、血流やジェットの要因が複合した結果とは思いましたが、今後の検討
テーマになるものと思いました。

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韓国アサンのDr. Joon Bum Kimは彼の研修医時代からの友人(というよりこの道の
可愛い後輩)で、韓国の若手ホープとして精力的に研究を進めているのがわかる発表
でした。治療成績の向上に従って、大動脈基部の手術タイミングは徐々に早くなりつつ
あり、三尖大動脈弁でも直径45mmなら手術する方向に進みつつあるようです。
AATSコンセンサス2018を元に検討することが望ましいと思いました。

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日本から私がご指名させていただいた東京の国原先生は複雑な大動脈弁形成術を紹介
されました。とくに二尖弁ARの三尖化+ヤクー手術+シェーファー糸の組み合わせは
立派と思いました。現時点でこれが最も良い複雑大動脈弁形成術のようです。今後これ
をどう簡略化し、確実な長期予後を実現するかが課題と思いました。

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サウジアラビアのTash Adel先生は万策尽き果てた場合のVADつまり補助循環の話を
されました。虚血性MRを含む機能性MRにMVRつまり弁置換をやると、心室がなかなか
リバースリモデリングしない、つまり良くならないことも示されました。弁置換をでき
るだけ避けて弁形成できるよう努力している私にとっては、わが意を得たり!の心境
でした。

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同じサウジのMaie先生は内科の立場からARやMRの後の壊れた心室はなかなか戻ら
ないことを示されました。私の経験ではそれらはかなり良く回復するので、乳頭筋の
吊り上げをやれば、とお勧めしました。しかし彼らの患者さんはリウマチ性が多い
ため心筋炎が関与している恐れあり、この点からも検討して下さいとお願いしておき
ました。

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午前中後半は僧帽弁のセッションでした。
世界で最もリウマチ性僧帽弁弁膜症の手術をやっているベトナムのバンファン先生が
その手技を披露されました。肥厚した二次腱索の切断や交連部のマジック糸や、心内膜
炎の時の二重心膜によるMAPなど様々なテクニックを紹介されました。
北京のXu Meng先生は同様にリウマチ性僧帽弁の治し方を解説されました。

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ここから機能性MRの話となり、Dr. John Chanがこの病気での弁形成の現況を概説
されました。
そこで私がこれまで開発して来た「心室を治すことで弁逆流を治す」方法をお話し、
これが病態の本質に触れる治療であり、これからもっと多数の患者さんを助けられる
でしょう、と結論しました。
ディスカッションの時間が足りず、後で個別で相談しましたが、上記Dr. Chanも関心
を持ってくれ、彼が主宰する機能性MRの単行本の改訂版にはぜひ君の手術を描いて
くれと言っていただき嬉しいことでした。

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日本から私が指名させていただいた山口先生はお得意の僧帽弁の弁尖拡大法を披露
されました。
Dr. Yeoはカテーテルで治療するMクリップの世界の現況を紹介されました。COAPT
トライアルその他で多数の研究がなされていますが、まだかなりばらつきがあり、
何れにしても弁を操作するだけなので、左室自体を直さないという弱点は残ります。
私たちが目指す心室治療の補助的な位置付けに終わるように、個人的には思っています
が、まずは心室の外科治療を世界に普及させることが先決なので、まだまだ気を抜け
ません。

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オレゴンのDr. Anthony Furnaryは例のSMRを用いて、同じ世代の健康人との対比
において、僧帽弁形成術後はSMR2.3、僧帽弁置換術後は2.7とあまり違わないという
結果を報告されました。これは納得行く数字で、彼の病院での僧帽弁形成術とは
単なる弁輪形成術なので、あまり良い成績が出なかったのは当然です。ぜひ私たちの
新しい方法を使って下さいとお勧めしておきました。

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熱いディスカッションは時間の都合で打ち切りになり、午後は皆でまた遠足に行き
ました。後で皆さん秋の京都は素晴らしいと何度も言っていただき、光栄でした。
夜のディナーには皆さん定刻に戻られ(立派です)賑やかなひと時を過ごしました。

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平成30年11月15日

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医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
心臓血管外科専門医・指導医
米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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