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ある日突然、病院で「心臓手術が必要です」と言われたら、あなたはどう感じられるでしょうか。
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人間誰でも体にメスを入れられるのは嫌なものです。だからさまざまな理由をつけてそれを逃れようとするのはある意味、当然のことです。
しかしその心臓手術が患者さんにとって益する、つまりオペするほうがしないより安全上有利となればどうでしょうか。しかしその情報が信頼に足りるものであることが必要ですね。
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このコーナーでは 患者さんが心臓手術をと言われてお困りのとき、頭が真っ白になってどうしたら良いかわからないときに、静かに客観的に情勢を見極めるのに役立つ情報を集めました。
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ようするにその手術があなたの得になるなら受ける、損になるなら受けない、
その判断材料を提供します。
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◆まずその心臓手術の必要性について
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■ホントに必要なの?→→心臓手術することで寿命が延びるなら必 要と言えましょう。逆にプロが見たら不要だったということもあります。できるだけ科学的に、客観的に、つまり正しくすることが大切で、、 →続きを読む
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■こんなに元気なのに!→→そのとおり、症状のない方に手術するのはかなり限定した状況のときです。つまりこれから悪くなるのが確実な時などですね。その一方、危険が迫る病気では、オペを乗り切るだけの体力があるうちが有利です →続きを読む
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■どこも痛くないよ!→→痛くない心臓病もあります。強い痛みが出るタイプの心臓血管病は患者さんも実感があり判断が遅れることが少ないのですが、痛みがないタイプでは逆に手遅れにならないよう、注意が必要なのです →続きを読む
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■じっとしてたら苦しくないよ!→→それは4度の心不全ではなさそうですね。しかしじっとしていて苦しいようでは手遅れのこともあります →続きを読む
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■心臓手術しなくっても生きて行けるんじゃない?→→今の状態がいつまで続くのかを知ることが大切です。そしてオペしないときに、患者さんがいつ、どのように死んで行かれるかを知ってください →続きを読む
■心臓なんて切ったら生きていけないんじゃない?→→
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それは昔の常識でしたが今は違います。
この臓器は血液ポンプであり「こころ」は宿っていませんし →続きを読む
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■もう手遅れなんじゃない?→→
手遅れかどうかまず調べることが大切です。ご自分で早合点して助かるチャンスを逃した方もこれまでありました。
また病院によってその手遅れ判断は大きく違います。
つまり病院によっては手遅れでないということがあるのです →続きを読む
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◆そしてその病院に対して、
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■この病院で心臓手術受けて大丈夫?→術者や病院の実績を調べることが大事です。こと執刀数については、日本の心臓血管外科専門医は心臓と血管合せて50例で合格します。心臓だけなら20例そこそこでも専門医になれるわけで、欧米の専門医のように信頼の証にはなりません。また数だけでなく質も大切です。簡単な心臓手術をたくさんやっているだけの病院もあるのです。
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■ほかにもっと良い病院や先生がいるんじゃない?→そうかも知れません。まず調べることが大切です。心臓手術は一生に一度あるかないかのおおごとです。納得できる病院と先生のもとで受けましょう。
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■この病院、大病院だけどあまり心臓手術やってないよ→建物だけは立派だけど中身は平凡という病院は意外に多いです。建物より内容、実績が大切ですよ。
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■アルバイトの先生はいても常勤の先生が少ないし→アルバイトや非常勤の内容によってはチームとして不完全なこともあります。
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■セカンドオピニオンを ほかでもらえない?→それは患者さんの権利です。いつでももらえるはずです。迷うときにはもらうことをお勧めします。前もってネットで情報を得ておくことも役立ちます。→続きを読む
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■でもそんなことしたら、この病院の先生に嫌われる?→セカンドオピニオンを渋ったり、ひどいときには断る先生が今なおおられると聞いています。それ自体、医師として欠陥ものです。というのは自分がやっている医療を他人に見られたくない、自信がないからです。こういう場合、せかんオピニオンは必須です。
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◆さらにその心臓手術の詳細について、
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■(弁膜症手術の場合)弁形成ができるんじゃない?→→弁置換はたくさんやっていても弁形成ができない病院はかなりあります →続きを読む
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■長持ちする弁形成の実績はあるんだろうか→弁形成の後、長期の成績をきちんとフォローし発表している病院が良いでしょう→続きを読む
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■僧帽弁の後尖だけなら治せるなんて言ってるけど→それは前尖は治せない、つまり人工腱索の長さを自信をもって決められないという意味なのです。弁形成のレベルが低いという証拠になり、後尖の形成さえあやしいと言えましょう。
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■創 (きず)が小さいミックス手術(ポートアクセス法)はできないの?
→→ミックス手術ができない病院はたくさんあります。ごく簡単なミックスを少数行って、いつもやっているように語るところもあります。複雑弁形成や大動脈弁手術などもミックスでやっているかを聞くのも良いでしょう。
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(左写真は私たちのミックス弁膜症手術のあとです)→真実は
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■ホントにお目当ての先生に執刀してもらえるの?→→希望をはっきりと言いましょう。このような大事な時に遠慮は無用です →続きを読む
■すぐ仕事復帰できるんだろうか?→→オペから平均1か月程度ですが、仕事内容によってはもっと早くなります。またミックスのあとは早めに復帰できます。→続きを読む
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■孫の結婚式までに退院できるの?→→およその計算は前も ってできます→続きを読む
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■脳梗塞にはならずにすむんだろうか?→→心臓手術の熟練チームなら脳梗塞はめったに起こらなくなりましたが、動脈硬化が強い方などでは注意が必要です →続きを読む
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■オペのあと、創が痛いんだろう?→→ある程度の痛みはつきものですが、私たちの経験ではミックス手術とくにポートアクセス法のあとは痛みは軽いです →続きを読む
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■お金がかかるんじゃない?→→幸い日本では保険制度のおかげで心臓手術の患者さんの自己負担はわずかです。ただしロボットなど保険適応ですべてカバーできない方法では高額の出費が必要です →続きを読む
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■家族に迷惑かけたくないし→→通常の保険診療での心臓手術でしたらご家族の負担も軽いです →続きを読む
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■自分の年齢と体力でほんとに大丈夫?→→近 年は80代の患者さんの心臓手術は当然のようになりました。若い方よりは注意が必要ですが、昔の70代ぐらいの印象ですね →続きを読む
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■糖尿病あるし、、→→糖尿病の方こそオペの恩恵をもっとも受けるという心臓病もあります。たとえば狭心症・心筋梗塞などですね →続きを読む
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■腎臓も悪いし、、、→→心臓病が悪いままだと利尿剤などのために腎臓が弱っていくことがあります。なお腎不全でも心臓手術はできるのです。一方、腎臓を守るためにも心臓手術するというケースもあります。 →続きを読む
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■肝臓がダメと言われてるから、、→→肝臓も同様です。ただあまり肝臓がやられ過ぎると、オペはできなくなります。そうなるまでに受けるのを勧めます →続きを読む
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■輸血になったらどうしよう!→→輸血は極力避けるよう全力を尽くします。しかし生きて頂くためにどうしても必要ということもあります。この意味で自己血貯血をやる病院は理想的です →続きを読む
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こ うしたさまざまな不安や心配がつのるかも知れません。
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その病院の主治医とじっくり相談することがまず大切です。
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しかし納得できない、あるいは判断しづらいときには、広く情報を集めるべきです。
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上記のように他病院でセカンドオピニオンをもらうのも大変有益です。
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◾️餅は餅屋に
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また心臓内科だけでなく心臓外科の意見をもらうことも重要です
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冠動脈の病気なら冠動脈の専門家に、弁膜症なら弁の専門家の、大動脈疾患なら大動脈の専門家の意見を聴くのが良いでしょう
餅は餅屋ですから
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心臓手術は一生に一度あるか どうかの大きな出来事です。
他の手術と比べて、多少ともリスクは高いこともあります。
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医師や病院との信頼関係はきわめて重要ですが、同時に
自分のいのちや健康は自分で守るという気持ちも大切です
いのちあってのものだねですから
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Q1.心臓血管手術の 医療費はどのくらい?
Q2.遠方の患者さんの場合は?
Q3.他院で受けるには?
Q4.かかりつけ医の大切さ
Q6. 付き添いさんについて
Q7. 後期高齢者の患者さん
Q8.コネとカネは必要?
Q9. 突然手術と言われて納得できません→より良い説明
Q10. 内科の先生から大したことはないのでもう病院へ来なくて良いと言われました。大丈夫でしょうか?→より良い説明2
❤ 医学的なこと (個々の病気に関することは解説の各ページをご覧下さい)
Q1.心臓手術をそちらで受けたいのですが、心臓以外の病気ももっており、、、→私のお勧めは、、
Q2.糖尿病もわずらっています。→糖尿病についてあるいは糖尿病性網膜症について
Q3.血液透析を受けています。→慢性腎不全・血液透析について
Q4.高齢ですが→ご高齢の患者さんについて
Q5.私はがんと心臓病の両方を持っています。→がんをお持ちの心臓病患者さんについて
Q6.手術前に心カテーテル検査は?→心カテーテル検査
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Q9.サルコイドーシス心筋症について
Q10.→マルファン症候群について
日本マルファン協会での講演と質疑応答 2010年8月 へ進む
Q11.→心臓の再生医療について
Q12.下肢(足)の再生医療は?→新しい再生医学の治療法
Q13.成人先天性心疾患について
Q14.ペースメーカーによる三尖弁閉鎖不全症について
Q15.心臓病の名医とは
Q16.術後の社会復帰について
Q17.美容について
Q18.必要な検査
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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