バチスタ手術の患者さんにもまた忘れられないケースが多々あります。
三重県から当時勤務していた京大病院に来て下さったAさんはまだ30代の若者でした。
拡張型心筋症のため心不全が発生、苦しくて仕事ができなくなり、入院と退院を繰り返す生活が続きました。
このままでは生きている意味がないと考えるようになったAさんは意を決して私の外来に来られました。
左室はひどく拡張し、動きの比較的悪い部位と比較的良い部位がはっきりしていたため、これはバチスタ手術の改良型が威力を発揮する場面と判断しました。
手術では心尖部を温存し左室を丁度良い程度に小さくするバチスタ手術の改良型そのもので、スムースにできました。
術後経過は良好でまもなく元気に退院して行かれました。すっかりお元気になられ仕事復帰もしておられます。
バチスタ手術が患者さんに役立つことを実感した一例でした。以後、ほとんどゼロに近い死亡率で多数の患者さんにこの手術がお役に立つことになるのです。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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