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いい心臓・いい人生 【第138号】 第22回日本成人先天性心疾患学会にて
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発行:心臓外科手術情報WEB
http://www.shinzougekashujutsu.com
編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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新年のご挨拶をと思っているうちに、いつのまにか2月に入り時間の速さに負けて
いるこの頃ですが、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。
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先月、日本成人先天性心疾患学会に参加してまいりました。慈恵医大の森田紀代造
先生が会長で東京にて開催されました。
私は病院内の用事が多く、1日だけの参加となってしまいました。
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まず国際セッションで私たちが近年ちからを入れているオリジナル手術「Dual Repair」
を発表しました。虚血性僧帽弁閉鎖不全症や機能性僧帽弁閉鎖不全症に最近注目の
カテーテル治療(Mクリップ)は低心機能例などに効果が少ないという事が示されて
いる中で、低心機能例でも安定したMRの制御が長期間でき、心機能や運動能が改善
するため、Mクリップの良きパートナーになり得ることを示しました。これまでなす
すべもなく看取りになっていた患者さんたちをこれから多数お助けできればと思います。
海外の先生を含めていろいろと建設的なご質問をいただきうれしく思いました。
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つぎに今回の学会でほぼ唯一のビデオセッションにてKay-Reed法術後遠隔期のMRに
対する複雑弁形成をご紹介しました。Kay-Reed法とはこどもの弁形成によく使われる
簡便な方法で、逆流部分とくに交連部の弁輪を潰す形で閉じ、他の部分は温存します。
そのため術後も弁は体とともに成長するのです。小さいこどもさんには良い方法と
思います。
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それが大人になり、僧帽弁が両尖とも逸脱し弁輪形成部付近の後尖が低形成になって
いたため両尖にそれぞれ4本、計8本の人工腱索を立て、低形成部は心膜パッチで拡大
してうまく逆流は消えました。人工腱索は多数になればなるほど、その長さ調整が
難しいと言われますが、恩師デービッド先生の方法を改良して使いやすくしたため問題
なく完遂できました。高い評価をいただき、ありがたく思いました。
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1日だけの参加でしたが、他発表にも参考になる事が多く、たとえば先天性心疾患術後
のデービッド手術(自己弁温存大動脈基部再建)では肺動脈弁付近の剥離に注意など、
有用な情報が得られました。また心疾患をもつ妊婦さんをどう守るかの議論には鬼気迫る
真剣さがあり、産科・小児科・内科・外科・麻酔科はじめ各分野の先生方の患者さんへの
愛情を感じました。
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またランチオンセミナーで筑波大学循環器内科教授の小池先生がCPXの最新の成果を講演
され、今後に役立つ優れた内容でした。リハビリロボットHALを使ってみたくなりました。
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朝早起きして日帰りで夜遅く帰宅してでも参加する甲斐がある学会でした。関係の皆さま、
会長の森田先生、ありがとうございました。
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令和2年2月5日
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米田正始 拝
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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