最終更新日 2021年1月2日
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⬛️ Mクリップとは?
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Mクリップというカテーテル治療が話題になっています。機能性僧帽弁閉鎖不全症という心不全や拡張型心筋症(DCM)がらみの弁逆流が対象です。心筋梗塞やステントの後などに起こる弁逆流である虚血性僧帽弁閉鎖不全症は機能性僧帽弁閉鎖不全症の代表格です。→→Mクリップの解説はこちら
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このMクリップは心臓外科手術でちょくちょく使われるアルフィエリ法という簡易(つまり時として不完全)弁形成をカテーテルで行うものです。Mクリップとうい小さいデバイス(器械)をもちいて僧帽弁の前尖と後尖を真ん中でつなぐという簡単な方法です。
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カテーテルで行うため全身麻酔も不要ですし傷跡も残りませんし、まもなく食事も再開できます。
しかしきちんと治すわけではないため僧帽弁閉鎖不全症は残りやすく、一時消えても再発しやすい傾向は指摘されています。
それでも体への負担が少なく、ダメ元でトライする価値はあるという考えが多いです。なので最近話題なのです。
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⬛️ Mクリップでうまく行かない時は
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Mクリップで僧帽弁閉鎖不全症が一時減ってもまもなく元の状態に戻ってしまうことが少なからず起こります。簡易型治療なので致し方ないことです。
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そこで心不全の度合いなどを考えて外科手術を考慮する場合があります。元々重症の方の場合は、Mクリップがだめなら心移植か看取りかという選択肢になるケースも。→→心移植を検討中の方々へ
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外科手術を考慮する場合、僧帽弁閉鎖不全症の中でも拡張型心筋症や虚血性心筋症に続発する機能性僧帽弁閉鎖不全症または虚血性僧帽弁閉鎖不全症ではMクリップのためすでに弁が壊れており、手術の際には弁置換つまり人工弁になってしまったというケースが欧米から報告されています。
僧帽弁の付け根はそら豆型をしているのですが、そこへまん丸の人工弁を入れて左室の形を歪めて心臓に良いわけはありません。人工弁は止む無く入れているのです。
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⬛️ Mクリップで不成功の後でも弁形成を?
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私たちは機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術にちからを入れて来ました。20年間で年々進歩し、大抵の弁は治せるというところまで来ました。とくに拡張型心筋症や虚血性心筋症など、左室が壊れた状態で、本来の半分から3分の1まで(時に4分の1なども)パワー低下した心臓でも弁形成で逆流を直し、あわせて心機能をある程度以上回復させる、時に劇的に改善させるという結果を得ています。
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最新型の手術法はDual Repair (デュアル形成)と呼び、これまでの僧帽弁乳頭筋吊り上げ手術と新しい左室形成術を組み合わせたものです。これによって機能性僧帽弁閉鎖不全症や虚血性僧帽弁閉鎖不全症の患者さんのお役に立っています。→→デュアル形成をもっと知る
実際、有名なCOAPT臨床試験やMITRA-FR臨床試験でMクリップの効果なしとされた患者群と、私たちのデュアル形成の患者群は極めて近く、Mクリップが効果を出せない患者さんたちを新しい手術は直している、と言えましょう。
この方法でMクリップ後の患者さんをお助けできればと考えています。それも弁置換ではなく弁形成で、左室のパワーもできるだけ上げるという方向で。
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機能性僧帽弁閉鎖不全症に対してMクリップを受けたあと、経過が思わしくない方も、諦める前に一度はご相談を。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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