大動脈弁閉鎖不全症、、患者さんの想い出2

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Bさんは60代女性です。やはり大動脈弁閉鎖不全症のため左室が壊れ、左室駆出率が20%台にまで低下して私の外来に来られました。関西地区の有名センターや大学でも匙を投げられ、今から15年近く昔のことで移植もまだ始まったばかり、年齢も当時の限界を超えておられたため移植以外の治療でがんばるしかないという状態でした。

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ただ弁を取り換えるだけでは心機能が戻らず、まもなくBさんは死んでしまう、そうした予想が立ちました。

そこで手術のときにはまず大動脈弁置換を行い、あわせて僧帽弁形成術で拡張した僧帽弁輪を小さくすることで左室の縮小効果を狙いました。さらに術後の積極的な薬の使用で心臓をさらに磨きました。

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1年余りの間にBさんの心臓は大きく回復し、左室駆出率も50%を超え、正常の近くにまで戻すことができました。

その後さらに進んだ方法を考案し、薬も良くなったため、現在ではもっと安全かつ確実に左室を回復させることができるようになりました。たとえば乳頭筋最適化手術(PHO)ですね。

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Bさんの経験は私にとって大動脈弁閉鎖不全症の末期の患者さんの心不全治療の大きな一歩になったものと今なお印象強く覚えています。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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